この記事の結論
一人ではなく、複数の株主で会社を作るとき、株主間契約を結んでおかないと、後で深刻なトラブルになる。鍵は、仲が良いうちに「もしも」を決めておくこと。株式の譲渡・買取のルール、意思決定の方法、役割を取り決める。揉めてからでは、決められない。複数で会社をやるなら、株主間契約で、共同経営のリスクに備える。専門家を交えて作成したい。
この記事は、Lv.5(拡大期)の一人社長に向けて書いています。
「複数で会社をやる」ときのリスク
これまで一人でやってきた事業も、拡大期に、誰かと共同で会社を作る、という展開がある。仲間と一緒に、複数の株主で会社を立ち上げる。志を共有する相手との共同経営は、心強い。
だが、ここに、見落とされがちな大きなリスクがある。複数の株主がいると、後で深刻なトラブルになり得るのだ。経営方針の対立、一方が抜けたいと言い出す、株の扱いでもめる。最初は仲が良くても、時間が経つと、利害や考えがずれてくる。そのとき、何も取り決めていないと、会社が立ち行かなくなる。このリスクに備えるのが、株主間契約だ。一人社長が共同経営に踏み出すなら、知っておきたい。
「株主間契約」とは
株主間契約とは、複数の株主の間で、会社の運営や株式の扱いについて、あらかじめ取り決めておく契約だ。
会社には、定款や会社法のルールがあるが、それだけではカバーしきれない、株主同士の細かい取り決めを、株主間契約で定める。「こういうときは、どうする」を、株主の間で、文書にして合意しておく。これがあると、後で利害が対立したときも、最初の取り決めに従って対応できる。共同経営の「もしも」に備える、安全装置だ。
「仲が良いうちに」決めておく
株主間契約で、最も大事なポイントが、仲が良いうちに決めておくことだ。
会社を一緒に作るとき、相手とは、たいてい仲が良く、信頼し合っている。「自分たちに限って、もめることはない」と思いがちだ。だが、まさにその時こそ、取り決めをするべきだ。
なぜなら、いざ対立してからでは、冷静に取り決めることができないからだ。揉めている最中に、「株をどうするか」「誰が決めるか」を話し合っても、合意できない。仲が良く、お互いを信頼している間に、「もしも、意見が対立したら」「もしも、誰かが抜けたら」を、ドライに決めておく。これは、相手を疑うことではなく、関係を長く守るための備えだ。契約で関係を明確にすることと、同じ発想だ。
「株式の譲渡・買取」のルール
株主間契約で、特に重要なのが、株式の譲渡・買取のルールだ。共同経営のトラブルの多くは、株の扱いで起きる。
- 株主の一人が抜けたいとき、その株を、誰が、いくらで買い取るか
- 株を、外部の第三者に勝手に売れないようにする
- 株主に万一のことがあったとき、その株はどうなるか
これらを決めておかないと、抜けたい株主の株が宙に浮いたり、知らない第三者が株主になったり、相続で株が分散したりする。株の出口(どう手放すか)のルールを、最初に決めておく。これが、共同経営の解消や変化に、円滑に対応する鍵になる。
「意思決定・役割」の取り決め
株式の扱いに加えて、意思決定の方法と、役割の取り決めも、株主間契約で定める。
- 重要な決定を、どう行うか(誰の同意が必要か)
- 各株主の役割と責任
- 利益や報酬の分け方
複数の株主がいると、「誰が、何を、どう決めるか」が曖昧だと、対立のたびに揉める。意思決定のルールを明確にしておけば、対立しても、決められる。役割や報酬も、最初に取り決めておくことで、「やっている量と取り分が合わない」という不満を防げる。これは、Win-Winの関係を、契約で担保することでもある。
「専門家を交えて」作成する
株主間契約は、法的に複雑で、内容も会社の状況によって変わる。だから、専門家(弁護士)を交えて作成するのが望ましい。
何を、どう取り決めるべきか。法的に有効な形にするには、どうするか。これらは、専門知識が要る。弁護士に相談し、自分たちの状況に合った株主間契約を作る。
ただし、丸投げはしない。「何のために結ぶのか」「どんな『もしも』に備えたいのか」を、株主同士で話し合い、その意思を、専門家に形にしてもらう。契約の中身は、自分たちで考え、法的な形は専門家に。共同経営という重要な関係だからこそ、きちんとした契約で、土台を固める。
拡大期の一人社長へ
一人でやってきた事業も、拡大期に、複数の株主で会社を作る展開がある。共同経営は心強いが、複数の株主がいると、後で深刻なトラブルになり得る。これに備えるのが、株主間契約だ。
複数株主なら株主間契約を検討し、仲が良いうちに「もしも」を決めておく。株式の譲渡・買取のルール、意思決定・役割の取り決めをし、専門家を交えて作成する。共同経営のトラブルは、関係が良いうちには想像しにくい。だが、まさにその時に備えておくことが、関係を長く守り、いざというとき会社を守る。複数で会社をやるなら、最初に「もしも」を決めておく。それが、拡大期の一人社長の、共同経営への備えだ。