この記事の結論

仕事で、自分のミスが相手に損害を与えたら、損害賠償を求められることがある。独立期の一人社長は、この可能性を理解し、過大な責任を負わないよう備える。鍵は、契約書で「賠償の上限」を定め、「どこまでが自分の責任か」を明確にすること。賠償リスクの大きい仕事は、特に契約を固める。必要なら、賠償保険も検討する。備えがあれば、過度に恐れずに仕事ができる。

この記事は、Lv.2(独立期)の一人社長に向けて書いています。

「自分のミスで損害が出たら」

独立して仕事を請けると、一つのリスクが現実になる。自分のミスが、相手に損害を与えたとき、賠償を求められる可能性だ。

納品物に不具合があって相手の業務が止まった、自分のミスで相手が損失を被った、納期に間に合わず相手に被害が出た。こうしたとき、相手から損害賠償を請求されることがある。会社員なら、こうした責任は会社が負ってくれた。だが独立すると、その責任を、自分一人で負う。これは、独立期に知っておくべき、重要なリスクだ。怖がりすぎる必要はないが、備えは要る。

賠償リスクを「理解する」

まず、損害賠償のリスクがあること自体を、理解する。

仕事には、ミスがつきものだ。どれだけ気をつけても、ミスはゼロにできない。そして、そのミスが、相手に金銭的な損害を与えれば、賠償の問題になり得る。特に、報酬は小さくても、相手のビジネスに大きく関わる仕事は、賠償額が報酬を大きく上回るリスクがある。「報酬5万円の仕事で、数百万円の賠償を求められる」という事態も、理論上はあり得る。このリスクの存在を、まず認識する。

契約書で「賠償の上限」を定める

損害賠償リスクへの、最も基本的で重要な備えが、契約書で賠償の上限を定めることだ。

何も定めなければ、賠償額に歯止めがない(青天井)。だから、契約書に「損害賠償は、報酬額を上限とする」といった条項を入れる。これにより、万一賠償が発生しても、報酬額を超える責任は負わない、という線が引ける。

これは、自分が受注する側として、最も守りたい条項だ。相手の用意した契約書に上限がなければ、交渉で入れることを求める。この一文があるかないかで、リスクの大きさがまるで変わる。これは、業務委託契約書を読むときの、重要なチェックポイントでもある。

「どこまでが自分の責任か」を明確に

賠償リスクを抑えるには、「どこまでが自分の責任か」を、契約で明確にすることも大事だ。

業務の範囲、自分が保証すること・しないこと、相手の責任範囲。これらが曖昧だと、「これも、あなたの責任だ」と、想定外の責任を負わされかねない。自分の責任範囲を明確にしておけば、その外で起きた損害について、責任を問われにくくなる。業務範囲を具体的に定めることが、賠償リスクの管理にもつながる。これは、最初の契約書の「業務範囲を決める」とも、同じだ。

リスクの大きい仕事は、特に固める

すべての仕事が、同じ賠償リスクではない。相手のビジネスの根幹に関わる仕事、ミスが大きな損害につながる仕事は、賠償リスクが特に大きい

こうした仕事は、契約を特に固める。賠償の上限、責任範囲、免責事項を、より慎重に取り決める。場合によっては、リスクに見合わない仕事は、受けないという判断もある。報酬とリスクのバランスを見て、「この報酬で、このリスクは引き受けられない」なら、断る勇気も要る。リスクの大きさに応じて、備えの強さを変える。

必要に応じて「賠償保険」を検討

契約での備えに加えて、賠償保険という選択肢もある。

フリーランス・個人事業主向けの、業務上の賠償責任に備える保険がある。万一、賠償責任を負ったときに、保険でカバーできる。賠償リスクの大きい仕事を多く請ける場合や、不安が大きい場合は、こうした保険を検討する価値がある。

ただし、保険料という固定費もかかる。自分の仕事の賠償リスクの大きさと、保険料を踏まえて、必要かを判断する。すべての人に必須ではないが、選択肢として知っておく。これは、個人事業主の保険の考え方とも、つながる。

独立期の一人社長へ

独立して仕事を請けると、自分のミスが相手に損害を与え、賠償を求められるリスクが、現実になる。会社員のときは会社が負ってくれた責任を、独立後は自分で負う。このリスクを理解し、過大な責任を負わないよう備える。

賠償リスクを理解し、契約書で賠償の上限を定め、自分の責任範囲を明確にする。リスクの大きい仕事は特に契約を固め、必要なら賠償保険を検討する。備えがあれば、賠償リスクを過度に恐れず、安心して仕事ができる。リスクをゼロにはできないが、青天井の責任を負わない設計はできる。それが、独立期の一人社長が、自分を守りながら仕事を続けるための、基本の備えだ。