この記事の結論
法人になると、税理士からいろいろな提案が来る。「この節税を」「この保険を」「役員報酬はこう」。だが、それを「先生が言うから」と鵜呑みにせず、自分の事業に合うか見極める力が要る。鍵は、提案の目的を確認し、税務上の最適と事業の最適を区別し、デメリットも聞くこと。納得できないものは、保留・質問する。提案を判断するのは、最後はあなただ。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
法人になると、提案が増える
法人化して税理士と顧問契約を結ぶと、税理士から、いろいろな提案が来るようになる。節税の方法、保険の活用、役員報酬の設計、決算対策。専門家からの提案だから、つい「先生が言うなら」と、そのまま受け入れたくなる。
だが、ここで立ち止まりたい。税理士の提案は、税務のプロの視点から来ているが、それが、あなたの事業全体にとって最適とは限らない。提案を鵜呑みにせず、自分の事業に合うかを見極める。これは、専門家のポジショントークを見抜くことや、専門家の本音と建前を読むことの、法人期版だ。
「鵜呑みにしない」のが前提
まず、心構えとして、税理士の提案を、鵜呑みにしない。これは、税理士を疑え、ということではない。提案を、自分のフィルターを通して判断する、ということだ。
税理士は、税務の専門家として、税金が最小になる提案をしてくれる。だが、税金が最小になることと、あなたの事業や生活にとって最適なことは、別だ。提案を「正解」として受け入れるのではなく、「自分にとって、本当に良いか」を、自分で判断する。これは、丸投げにしないという、一貫した姿勢だ。判断の主導権は、自分が握る。
「何のための提案か」を確認
提案を受けたら、まず「これは、何のための提案か」を確認する。目的をはっきりさせる。
- 税金を減らすため?
- リスクに備えるため?
- 資金を効率的に使うため?
目的が分かると、その提案が、今の自分に必要かを判断できる。「節税になる」という提案でも、そもそも今、それほど税金で困っていないなら、優先度は低い。目的を確認することで、提案の意味と、自分にとっての必要性が見える。目的が曖昧な提案、あるいは「とにかくやったほうがいい」と目的を語らない提案は、慎重に見る。
「税務の最適」と「事業の最適」を区別
税理士の提案を見極める、核心の視点がこれだ。「税務上の最適」と「事業全体の最適」を、区別する。
税理士は、税務の最適を提案する。たとえば「この節税策で、税金が減ります」。だが、その節税策が、資金繰りを圧迫したり、本当は不要な支出だったりすれば、事業全体では、最適ではない。
税金が減ることだけを見るのではなく、「事業全体で、本当に得か」を考える。これは、全体最適で考えることや、節税の順番の考え方と、同じだ。税務の最適を、事業の最適と取り違えない。提案を、事業全体の視点で、検算する。
「デメリット」も聞く
提案には、たいていメリットが語られる。だが、見極めるには、デメリット(リスク・手間・コスト)も聞くことが大事だ。
「この節税策のメリットは分かった。では、デメリットや、リスクは?」「手間や、後で困ることはないか?」と、自分から聞く。良い提案には、メリットとデメリットの両面がある。デメリットを聞いて、きちんと答えてくれる税理士は、誠実だ。メリットしか言わない提案は、片面しか見ていない。両面を把握した上で、判断する。これは、損得とコストの両面で見ることと、同じだ。
納得できないものは「保留・質問」
提案を受けて、納得できない、よく分からない、と感じたら、保留して、質問する。その場で、「先生が言うから」と決めない。
「もう少し考えたい」「ここが分からないので、教えてほしい」と言う。納得できないまま受け入れると、後で後悔する。良い税理士は、質問に丁寧に答え、納得するまで説明してくれる。急かす、質問を嫌がる、という反応なら、その提案は、いっそう慎重に見る。納得してから決める。判断を、急かされない。これは、急かされたら持ち帰るという基本でもある。
法人期の一人社長へ
法人になると、税理士からいろいろな提案が来る。専門家からの提案だから、鵜呑みにしたくなる。だが、税理士の提案は、税務の視点からのもので、あなたの事業全体に最適とは限らない。
提案を鵜呑みにせず、何のための提案かを確認し、税務の最適と事業の最適を区別する。デメリットも聞き、納得できないものは保留・質問する。税理士は、強力なパートナーだ。だが、提案を判断し、最終的に決めるのは、あなただ。「先生が言うから」ではなく、「自分の事業に合うから」で決める。その判断力が、法人期の一人社長が、専門家を本当に使いこなす力になる。