この記事の結論
役員や従業員に賞与(ボーナス)を支払ったら、賞与支払届を年金事務所に提出する義務がある。賞与にも、毎月の給料と同じように健康保険料・厚生年金保険料がかかるからだ。期限は支払日から5日以内と短い。賞与額の1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算する。一人社長が自分に賞与を出す場合は、社会保険だけでなく税務上の扱いにも注意が要る。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
賞与にも社会保険料がかかる
「保険料は毎月の給料から引かれるもの」という感覚があると、賞与は別物に思える。だが、社会保険の世界では、賞与も報酬の一部として扱われる。
賞与を支払うと、その額に応じて健康保険料・厚生年金保険料がかかる。毎月の給料と同じく、会社と個人でおおむね折半だ。だから賞与を出すときは、額面だけでなく、そこに乗る社会保険料(個人負担分の天引きと、会社負担分の支出)まで見ておく必要がある。賞与は社会保険の加入手続きをした会社にとって、給料と地続きのコストだ。
賞与を払ったら「賞与支払届」を出す
賞与を支払ったら、賞与支払届(被保険者賞与支払届)を年金事務所に提出する。これは、「誰に・いくら賞与を払ったか」を届け出て、賞与にかかる保険料を確定させるための手続きだ。
提出を忘れると、保険料の徴収や、将来の年金額の計算に影響する。賞与を出すと決めたら、支払いと届出はワンセットだと考える。一人社長の会社で、社長自身に賞与を出した場合も、社長が被保険者である以上、同じく届出の対象になる。
期限は「支払日から5日以内」
賞与支払届の期限は、賞与を支払った日から5日以内。毎月の給料の手続きに比べて、期限が短いのが特徴だ。
賞与を出した直後はバタバタしがちだが、5日はあっという間に過ぎる。電子申請(e-Gov・GビズID)でも提出でき、給与計算ソフトの多くは賞与支払届の作成に対応している。「賞与を払う」とカレンダーに入れたら、同時に「5日以内に賞与支払届」もメモしておくと取りこぼさない。
計算は「標準賞与額」で
保険料の計算は、実際の賞与額そのものではなく、標準賞与額を使う。標準賞与額とは、税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額のことだ。これに保険料率を掛けて、賞与にかかる保険料が決まる。
なお、標準賞与額には上限の仕組みがある(健康保険は年度単位、厚生年金は1回あたりで頭打ちがある)。高額の賞与を出す場合は、上限の存在も頭の片隅に置いておくと、保険料の見込みがずれにくい。細かな計算はソフトや専門家に任せても、「賞与=1,000円未満切り捨てた額に料率」という骨格を知っておくと安心だ。
役員賞与は「税務の扱い」も要注意
一人社長が自分に賞与を出すときは、社会保険とは別に、税務上の扱いに大きな注意点がある。役員への賞与は、原則として会社の経費(損金)に算入できない。事前に税務署へ届け出る「事前確定届出給与」などの定められた手続きを踏まない限り、賞与を払っても会社の利益を圧縮できず、税負担の面で不利になりやすい。
つまり役員賞与は、「社会保険料がかかる」だけでなく「税務上は経費にしにくい」という二重の論点を持つ。自分への賞与を考えるなら、役員報酬の決め方とあわせて、必ず顧問税理士に相談してから実行したい。
法人期の一人社長へ
賞与支払届は、「賞与を払ったら、5日以内に誰にいくら払ったかを届け出る」手続きだ。賞与にも社会保険料がかかること、標準賞与額は1,000円未満切り捨てであること、そして期限が短いこと——この3点を押さえておけば、手続き自体はシンプルに回る。
ただし、自分(役員)への賞与は、社会保険に加えて税務の扱いが厄介で、安易に出すと損をしかねない。届出という事務の話と、役員賞与を出すべきかという経営判断は、分けて考える。事務は淡々と、判断は専門家とともに——それが法人期の一人社長の賞与との向き合い方だ。