この記事の結論
法人化すると、たとえ社長一人の会社でも、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則義務になる。個人事業時代の国保・国民年金とは、制度も負担も別物だ。設立後すぐに年金事務所で手続きする。保険料は会社負担と個人負担の合計で、役員報酬に連動して決まる。法人化の「見えない固定費」として、最初に押さえておきたい。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
法人は「一人でも」社会保険
個人事業のときは、国民健康保険と国民年金に自分で加入していた。法人化すると、これが変わる。
法人は、社長一人だけの会社であっても、健康保険と厚生年金(社会保険)への加入が原則義務となる。「従業員がいないから関係ない」とはならない。役員報酬を受け取る社長自身が、加入対象になる。これは、個人事業からの大きな変化であり、見落とすと後で指摘される。法人化とは、社会保険の世界に入ることでもある。
設立後すぐに手続きする
社会保険の加入手続きは、法人設立後、速やかに行う。窓口は、管轄の年金事務所だ。
健康保険・厚生年金の新規適用の届出と、被保険者(社長自身や従業員)の資格取得の届出を提出する。設立のバタバタで後回しにしがちだが、加入は義務であり、遅れると遡って加入を求められることもある。会社設立の手続き一式の中に、社会保険の加入も組み込んでおく。税理士や社労士に設立を手伝ってもらう場合は、ここも併せて確認する。
保険料は「会社+個人」の合計で見る
社会保険料の負担を考えるとき、見落としがちなのが、会社負担分だ。
社会保険料は、会社と個人で、おおむね折半する。給与から天引きされる個人負担分だけでなく、同額程度を会社も負担する。一人社長の場合、会社もあなたのもの。つまり、会社負担分も、実質はあなたの財布から出ている。
だから、社会保険の本当の負担は、個人負担分だけを見ては分からない。会社負担分も合わせた合計で捉える。この合計が、役員報酬のおよそ3割に達することもある。法人化のコストとして、決して小さくない。
保険料は「役員報酬」に連動する
社会保険料の額は、役員報酬の額に連動して決まる。役員報酬を高く設定すれば、保険料も上がる。低く設定すれば、保険料も下がる。
これは、役員報酬の設計と直結する論点だ。手取りを増やそうと役員報酬を上げると、所得税だけでなく社会保険料も増える。逆に、報酬を抑えれば社会保険料は下がるが、将来受け取る厚生年金も少なくなる。報酬の設計は、税金と社会保険料、そして将来の年金まで含めて、総合的に考える必要がある。社会保険は、その重要な一要素だ。
扶養家族の手続きも忘れずに
配偶者や子どもを扶養に入れる場合、その手続きも併せて行う。
個人事業のときに国民健康保険だった家族を、法人の社会保険の扶養に入れられる場合がある。扶養に入れれば、追加の保険料負担なく家族を健康保険でカバーできる。ただし、扶養に入れるには収入などの条件がある。家族構成に応じて、誰を扶養に入れるか、加入手続きの際に整理しておく。
法人期の一人社長へ
社会保険は、法人化に伴ってついてくる、避けられない義務であり、固定費だ。「一人だから関係ない」ではなく、社長一人でも加入する。設立後すぐに年金事務所で手続きし、会社負担を含めた合計で負担を把握する。
そして、保険料は役員報酬に連動するため、役員報酬の設計とセットで考える。加入は入口にすぎず、その後も運用が続く。毎年7月には算定基礎届で、その年の保険料を決め直す。役員や従業員に賞与を払ったときは、その都度賞与支払届の提出が要る。加入したら終わりではなく、こうした年次の届出が一人社長についてまわると押さえておこう。
社会保険は、負担としては重いが、その分、厚生年金として将来に返ってくる面もある。制度を正しく理解した上で、自分の報酬設計と将来設計の中に位置づける。それが、法人期の一人社長の、お金との向き合い方だ。