この記事の結論
結論から言うと、年商1,000万円を超えるまで、税理士は必ずしも必要ない。少なくとも、僕はそうだった。会計ソフトと基本的な知識があれば、個人事業の確定申告は自分で完結できる。
ただし条件がある。そして「頼むべき明確なサイン」も存在する。この記事では、その両方を解説します。Lv.3(安定期)の一人社長に向けて。
なぜ「すぐ税理士」が勧められるのか
売上が安定してくると、周りから、あるいは税理士自身から「そろそろ税理士をつけたほうがいい」と言われ始める。
これは間違いではない。税理士に頼めば、申告の手間は減るし、ミスのリスクも下がる。税理士にとっても、安定期の一人社長は良い顧客だ。だから勧められる。
でも、ここで立ち止まってほしい。「あったほうがいい」と「今の段階で必要」は違う。 税理士の顧問料は年間で数十万円かかることもある。その支出に見合うリターンが、今のあなたの段階にあるか。それを判断するのは、税理士ではなく、あなた自身だ。
税理士がまだいらない条件
次の条件に当てはまるなら、今すぐ税理士をつける必要は薄い。
条件1:会計ソフトで申告まで完結できている
freeeやマネーフォワードといった会計ソフトは、日々の取引を記録すれば、確定申告書まで自動で作ってくれる。青色申告の65万円控除も、ソフトの指示に従えば対応できる。ここが回せているなら、申告作業そのものに税理士は要らない。
条件2:取引がシンプル
売上の入金と経費の支払いが中心で、複雑な取引(在庫、複数事業、海外取引など)がない。一人社長の多くはこの範囲に収まる。シンプルなうちは、自分で十分管理できる。
条件3:消費税の論点が整理できている
安定期で唯一ややこしいのが消費税・インボイスだ。だがこれも、判断軸さえ分かれば自分で対応できる(消費税・インボイス対応を参照)。ここに極端な不安がなければ、まだ自走できる。
それでも、自分でやる「本当の価値」
税理士を当面つけない最大のメリットは、お金の節約ではない。自分の事業の数字を、自分の手で触ることだ。
確定申告を自分でやると、何にいくら使い、どこで利益が出ているかが、嫌でも体に入る。経費の感覚、利益率の感覚、季節ごとの資金の動き——これは事業者の最も基本的な武器だ。
最初から丸投げすると、この感覚が育たない。数字を見ない経営者になる。後で税理士をつけるにしても、一度は自分で全部やった経験があるかどうかで、税理士との会話の深さがまったく変わる。
では、いつ頼むのか——4つのサイン
「いらない」を強調してきたが、税理士が明確に役立つタイミングは確実にある。次のサインが出たら、前向きに検討していい。
サイン1:法人化を具体的に考え始めた
法人税の申告は、個人の確定申告とは別物だ。決算、法人税・住民税・事業税の計算、役員報酬の設計——ここは独学でやり切るには重い。法人化を視野に入れたら、税理士を探す時期だ。
サイン2:本業の時間が、申告作業に削られている
売上が伸び、本業が忙しくなると、申告作業の数日が惜しくなる。「自分でできるが、その時間を本業に使ったほうが稼ぎが大きい」——この逆転が起きたら、それは頼むべき合理的な理由だ。時間を金で買う判断。
サイン3:判断に迷う論点が増えてきた
「この支出は経費になるか」「この処理で合っているか」と迷う場面が増え、調べる時間がかさむようになったら、相談相手としての税理士の価値が出てくる。
サイン4:売上規模が顧問料を十分に上回った
年商1,000万円を超え、利益も安定すれば、顧問料は事業の必要経費として無理なく吸収できる。費用対効果が合うラインだ。
「丸投げ」ではなく「壁打ち」で頼む
税理士をつけると決めたら、頼み方が重要だ。やってはいけないのは、思考ごと丸投げすること。
良い頼み方は「壁打ち相手」として使うこと。自分なりの判断を持った上で「こう考えているが、税務上問題ないか」と相談する。これなら、税理士の専門性を活かしつつ、経営判断の主導権は自分が握れる。
税理士は税務のプロだ。でも、あなたの事業全体のプロではない。だから税理士の提案を「自分の段階に合っているか」判断する力を、頼る前に持っておく。それが、踊らされない一人社長の頼り方だ。