この記事の結論

取引でトラブルになり、話し合いで解決しないとき、いきなり訴訟ではない。解決手段には段階があり、まず交渉、次に内容証明、調停やADR(裁判外紛争解決)、そして最後の手段として訴訟、という選択肢がある。そして、解決を左右するのは、もめる前の証拠・記録だ。紛争は、金額・時間・労力を踏まえ、適切な手段を選ぶ。訴訟が唯一の道ではない。

この記事は、Lv.5(拡大期)の一人社長に向けて書いています。

事業が大きくなると、紛争のリスクも

拡大期になり、取引の規模も件数も増えると、トラブルに遭う確率も上がる。代金が支払われない、契約をめぐる食い違い、損害の発生。話し合いで済めばいいが、相手が応じないこともある。

このとき、「もめたら訴訟」と短絡的に考える人がいる。だが、紛争の解決手段は、訴訟だけではない。訴訟は、時間も費用も労力もかかる、最後の手段だ。その手前に、いくつもの選択肢がある。紛争に直面したとき、慌てて訴訟に走るのではなく、段階的な選択肢を知っておくことが、賢い対応につながる。

解決を左右するのは「もめる前」

紛争の解決で、実は最も重要なのは、もめた後の手段選びより、もめる前の準備だ。

トラブルになったとき、解決を左右するのは、証拠と記録だ。契約書、やり取りの記録、納品の証拠、請求の記録。これらがあれば、自分の主張を裏付けられ、有利に解決できる。逆に、口約束で進め、記録がなければ、「言った言わない」になり、解決が難しくなる。

だから、紛争対策は、契約の段階から始まっている。契約書で条件を明確にし、やり取りを記録に残す。これは、契約書の作成や、取引の記録の習慣の、価値が発揮される場面だ。もめてから慌てるのではなく、もめる前の備えが、いざというとき自分を守る。

まず「交渉」での解決を

実際にトラブルになったら、まず試みるのは、話し合い・交渉による解決だ。

多くのトラブルは、冷静に話し合えば、解決できる。相手の言い分を聞き、こちらの主張を、証拠を踏まえて伝える。お互いが折り合える着地点を探る。交渉で解決できれば、時間も費用もかからず、関係も完全には壊れずに済む。いきなり強硬手段に出るより、まず交渉を尽くす。これが、紛争解決の第一段階だ。

「内容証明」という次の一手

交渉で進展しないとき、次の手段として知っておきたいのが、内容証明郵便だ。

内容証明は、「いつ、どんな内容の文書を、誰に送ったか」を、郵便局が証明してくれる仕組みだ。「代金を支払ってください」といった請求を、内容証明で送ることで、相手に本気度を伝え、記録を残せる。これだけで、相手が態度を変え、解決に向かうこともある。訴訟の前の、段階的な一手として有効だ。送り方や書き方には作法があるので、必要なら専門家に相談する。

訴訟「以外」の選択肢

交渉や内容証明でも解決しない場合でも、いきなり訴訟ではない。訴訟以外にも、裁判外の紛争解決手段がある。

  • 民事調停:裁判所で、調停委員を介して話し合う。訴訟より簡易
  • ADR(裁判外紛争解決手続):専門機関が、当事者の話し合いを仲介する
  • 少額訴訟:少額の請求について、簡易・迅速に行える訴訟手続

これらは、通常の訴訟より、時間・費用・労力の負担が軽い。紛争の内容や金額に応じて、適切な手段を選ぶ。訴訟は、これらでも解決しない場合の、最後の選択肢と考える。手段が一つではないと知っているだけで、冷静に対応できる。

「金額・時間・労力」で判断する

紛争解決の手段を選ぶとき、現実的に考えたいのが、金額・時間・労力のバランスだ。

たとえば、数万円の未回収のために、何ヶ月もかけて訴訟をするのは、割に合わないことがある。解決にかかる時間・費用・労力と、得られるもの(取り戻せる金額など)を、天秤にかける。「正しさ」だけでなく、「割に合うか」も判断材料にする。

もちろん、金額の問題ではなく、筋を通すべき場面もある。だが、感情的に突き進む前に、冷静にコストとリターンを見る。これは、経営判断としての、紛争への向き合い方だ。

拡大期の一人社長へ

取引が増える拡大期は、トラブルに遭うリスクも上がる。だが、もめたとき、いきなり訴訟ではない。解決手段には段階があり、まず交渉、内容証明、調停・ADR、そして最後に訴訟、という選択肢がある。

そして、解決を左右するのは、もめる前の証拠・記録だ。契約と記録の習慣が、いざというとき自分を守る。トラブルになったら、まず交渉を尽くし、段階的な手段を知り、金額・時間・労力を踏まえて判断する。訴訟が唯一の道ではない。紛争解決の選択肢を知っておくことが、いざというときに、冷静で、割に合う対応を可能にする。それが、拡大期の一人社長の、リスクへの備えだ。