この記事の結論
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産に備えつつ、掛金が全額経費(損金)になり、一定期間後に解約すれば戻ってくる、という制度だ。安定期〜法人期の一人社長に人気がある。ただし、これは「節税」ではなく「課税の繰り延べ」だ。解約時には益金になるため、出口(いつ・どう解約するか)を計画しておく必要がある。仕組みを理解して、賢く使いたい。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
「備え」と「経費」を兼ねる制度
事業をしていると、取引先が倒産して、売掛金が回収できない、という事態が起こり得る。この連鎖的なリスクに備えるのが、**経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)**だ。
この共済は、取引先が倒産したとき、無担保・無保証で、一定額の貸付を受けられる、という備えの制度だ。だが、それ以上に注目されているのが、税制上のメリットだ。掛金が全額経費になり、しかも一定期間後に解約すれば戻ってくる。「備え」と「経費」を兼ねるこの制度は、節税の手段として、安定期〜法人期の一人社長に、よく使われる。仕組みと注意点を、理解しておきたい。
「掛金が全額経費」になる
経営セーフティ共済の、最大の魅力が、掛金が全額、経費(損金)になることだ。
毎月の掛金(一定の範囲で設定できる)を払うと、その全額が経費になり、その分、利益が圧縮され、税負担が軽くなる。一定の上限まで、掛金を積み立てられる。利益が出ている年に、掛金を払うことで、その年の税金を抑えられる。これが、節税策として人気の理由だ。
「解約すれば戻ってくる」
経営セーフティ共済が、ただの経費と違うのは、払った掛金が、消えずに戻ってくることだ。
一定期間(40ヶ月以上)掛金を払ってから解約すれば、掛金が全額戻ってくる(それより短いと、戻る割合が減る)。つまり、掛金は「払って終わり」ではなく、「積み立てて、後で受け取れる」お金だ。
備えとしての貸付機能を持ちつつ、使わなければ、解約して掛金を回収できる。実質的に、税金を抑えながら、資金をプールしておけるような形だ。これが、小規模企業共済などと並ぶ、低リスクで出口のある備えとして、人気を支えている。
「節税」ではなく「繰り延べ」
ここで、最も重要な注意点。経営セーフティ共済の「節税」効果は、税金が消えるのではなく、「課税の繰り延べ」だ。
掛金を払うときは、経費になって税金が減る。だが、解約して掛金を受け取るとき、それは**益金(収入)**になり、その年の税金が増える。つまり、払うときに減った税金が、受け取るときに戻ってくる。トータルで見れば、課税のタイミングをずらしているだけ、という面が強い。
繰り延べが無意味なわけではない。利益の出た年に税金を抑え、資金をプールできる。だが、「税金が消えた」と誤解すると、解約時に「こんなに税金がかかるのか」と慌てる。繰り延べた税金は、いつか払う。これを前提に使う。これは、法人保険の「節税」と、同じ構造だ。
「出口」を計画しておく
繰り延べである以上、最も大事なのが、出口(いつ・どう解約するか)の計画だ。
解約すると、掛金が益金になり、大きな利益が出る。その利益に、税金がかかる。だから、解約のタイミングを、計画しておく。
- 赤字の年や、大きな経費が出る年に解約して、益金をぶつける
- 退職金を払う年に合わせる
こうして、解約による益金を、他の費用と相殺できれば、トータルの税負担を抑えられる。出口を考えずに、利益の出ている年に解約すると、その益金に、まるごと税金がかかる。入口(加入)だけでなく、出口(解約)まで設計するのが、経営セーフティ共済を賢く使うコツだ。税理士と相談して、出口を計画する。
法人期の一人社長へ
経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備えつつ、掛金が全額経費になり、一定期間後に解約すれば戻ってくる、よくできた制度だ。安定期〜法人期に、低リスクで出口のある備えとして、検討する価値が高い。
取引先の倒産に備える共済だと理解し、掛金が全額経費になり、後で戻ると知る。ただし、これは「節税」ではなく「課税の繰り延べ」だ。解約時には益金になるので、出口を計画しておく。仕組みを正しく理解すれば、経営セーフティ共済は、税負担を抑えながら資金をプールできる、有効な備えになる。「節税になる」の言葉だけで飛びつかず、繰り延べと出口を踏まえて、賢く使いたい。