この記事の結論
資産が増えると、個人の資産、法人の資産、そして事業そのものが、バラバラに存在するようになる。拡大期は、これらを一つの絵(ポートフォリオ全体)として捉え、バランスを設計する。特に、資産が事業に集中しすぎるリスクを意識し、分散と流動性を確保する。全体を俯瞰し、リスクを偏らせない。個別の投資判断の前に、全体の設計を持つ。
この記事は、Lv.5(拡大期)の一人社長に向けて書いています。
資産が、バラバラに存在し始める
拡大期になり、事業で資産が築かれてくると、お金や資産が、いくつもの場所に存在するようになる。
- 個人の資産:個人の預金、NISAやiDeCoなどの運用、不動産など
- 法人の資産:会社の内部留保、法人での運用や保険など
- 事業そのもの:最大の「資産」とも言える、事業の価値
これらは、それぞれ別々に管理され、別々に考えられがちだ。だが、本来、これらは、あなたの資産全体を構成する、一つのまとまりだ。バラバラに見ていると、全体のバランスや、隠れたリスクが見えない。拡大期は、これらを一つの絵として捉え、全体を設計する視点が要る。
最大のリスクは「事業への集中」
一人社長の資産を全体で見たとき、最も大きなリスクは、資産が事業に集中しすぎていることだ。
一人社長は、収入も、資産も、その多くが、自分の事業に依存している。事業が順調なら問題ないが、事業が傾けば、収入も、事業という資産の価値も、同時に失われる。すべての卵を、一つのカゴ(事業)に入れている状態だ。
この集中リスクを、意識する。事業は、最大の資産であり、最も力を注ぐべきものだ。だが、それだけに依存していると、事業の不調が、すべてを揺るがす。だからこそ、事業以外にも、資産を分散させておく必要がある。全体で見ると、この集中リスクが、はっきり見えてくる。
資産を「分散」する
集中リスクへの対策が、分散だ。資産を、性質の違う複数のものに分けて持つ。
- 事業(最も大きいが、リスクも高い)
- 個人の運用資産(株式・投資信託など)
- 現金(安全だが増えない)
- (場合により)不動産など
これらを、バランスよく持つことで、どれか一つが不調でも、全体が崩れない。事業に全力を注ぎつつ、事業の利益の一部を、事業以外の資産に回しておく。一つに偏らせず、分散させる。これは、つみたてNISAやiDeCoでの「分散」の考え方を、資産全体に広げたものだ。全体のリスクを、偏らせない。
「流動性」を確保する
資産を設計するとき、忘れてはいけないのが、流動性——すぐに使えるお金——だ。
資産が、事業や、すぐには現金化できないもの(不動産、解約しにくい保険など)に偏っていると、いざというときに、使えるお金がない。事業の急な資金需要、個人の緊急の出費。これらに対応するには、すぐ引き出せる現金が要る。
資産全体の中に、適切な流動性を確保しておく。増やすことばかりに目が向くと、流動性が疎かになりがちだ。これは、緊急資金の考え方を、資産全体で見たものだ。攻め(増やす)と守り(すぐ使える現金)のバランスを、全体で設計する。
全体を「定期的に見直す」
資産全体のポートフォリオは、一度設計したら終わり、ではない。事業の状況、個人のライフステージ、市場の変化に応じて、バランスは変わる。だから、定期的に見直す。
年に一度でも、個人・法人・事業の資産全体を、一つの絵にして眺める。事業に集中しすぎていないか、分散は適切か、流動性は足りているか、全体のバランスはどうか。そして、必要なら、配分を調整する。全体を俯瞰する習慣があれば、隠れたリスクに早く気づき、対応できる。木(個別の投資)だけでなく、森(全体)を見る。
個別判断の前に、全体の設計を
不動産投資、法人保険、新しい運用——拡大期には、個別の投資の話が、次々と来る。だが、これらに飛びつく前に、全体の設計を持っておくことが大事だ。
「この投資は、自分の資産全体の中で、どういう位置づけか」。全体の設計があれば、個別の投資判断が、それに照らして、ぶれずにできる。全体像なしに、個別の話に乗っていくと、気づけば、資産が偏ったり、流動性が失われたりする。全体の設計が、個別判断の軸になる。これは、部分最適でなく全体最適で考える、という強化書の基本姿勢の、資産版だ。
拡大期の一人社長へ
資産が増えると、個人・法人・事業の資産が、バラバラに存在するようになる。拡大期は、これらを一つの絵として捉え、全体のバランスを設計する視点が要る。
個人・法人・事業の資産を全体で捉え、事業への集中リスクを意識し、資産を分散し、流動性を確保する。そして、全体のバランスを定期的に見直し、個別判断の前に、全体の設計を持つ。一人社長は、資産が事業に集中しがちだ。だからこそ、全体を俯瞰し、リスクを偏らせない設計が、自分と事業を守る。木だけでなく森を見る——それが、拡大期の一人社長の、資産を守り、育てる、成熟した視点だ。