この記事の結論
業務委託契約書は、相手が自分に有利に作っている前提で読む。サインする前に見るべきは「契約の型・報酬・成果物の権利・損害賠償・解除条件」。そして最も大事なのは、契約書は交渉してよいということ。出された条件をそのまま飲む必要はない。
この記事は、Lv.2(独立期)の一人社長に向けて書いています。
「相手が作った契約書」を読む立場になる
準備期は、自分が契約書を用意する側だった。独立して取引が増えると、今度は逆に「相手が用意した契約書にサインする」場面が増える。企業がフリーランスに発注するときは、たいてい企業側のフォーマットが出てくる。
ここで知っておくべきは、その契約書は相手(発注側)が、自分に有利になるよう作っているのが普通だということ。悪意があるわけではないが、リスクは受注側に寄せられがちだ。だから、読み飛ばさず、自分にとって不利な条項がないかを確認する。
サインする前に見る6つの条項
1. 契約の型(請負か準委任か)
業務委託には大きく2つの型がある。「請負」は成果物の完成に責任を負う型。「準委任」は作業の遂行に責任を負う型で、完成までは求められない。自分の仕事がどちらか、契約書の型が実態に合っているかを見る。完成を保証できない性質の仕事なのに請負になっていると、過大な責任を負うことになる。
2. 報酬(金額・支払時期・条件)
金額はもちろん、「いつ・どういう条件で払われるか」を確認する。「検収後」「請求書発行の翌月末」など。検収の基準が曖昧だと、「まだ完成していない」と言われて支払いが遅れる。報酬が固定か、作業量に応じてか(時間単価か成果物単位か)も明確にする。
3. 成果物の権利(著作権の帰属)
作ったものの著作権がどちらに帰属するか。多くの企業フォーマットは「成果物の著作権は発注者に帰属する」となっている。譲渡してよいかは自分の判断だが、少なくとも「自分の実績として公開してよいか」は確認しておきたい。守秘とポートフォリオ掲載の関係も含めて見る。
4. 損害賠償
トラブルが起きたとき、いくらまで賠償する義務があるか。ここが**青天井(上限なし)**になっていると、報酬数万円の仕事で、桁違いの賠償リスクを負いかねない。「損害賠償は報酬額を上限とする」といった上限条項があるか、なければ交渉で入れたい。独立期に最も注意すべき条項の一つだ。
5. 契約解除・中途解約
相手が一方的に契約を打ち切れる条件はどうなっているか。「発注者はいつでも解約できる」一方で受注者には縛りが強い、という非対称な作りもある。途中で打ち切られたときの、それまでの作業分の報酬の扱いも確認する。
6. 秘密保持・競業避止
守秘義務の範囲、そして「契約後◯年間は同業の仕事をしてはいけない」といった競業避止の条項がないか。競業避止が広すぎると、独立期の貴重な仕事の幅を、不当に狭められることがある。
「交渉してよい」と知っておく
独立したての人が最も誤解しているのが、「契約書は出されたとおりにサインするもの」という思い込みだ。そんなことはない。契約書は、双方が合意して初めて成立する。気になる条項があれば、修正を申し出ていい。
たとえば「損害賠償の上限を報酬額に」「成果物を実績として公開できるように」と頼むのは、まっとうな交渉だ。すべてが通るわけではないが、言わなければゼロ。理不尽な条項を黙って飲む必要はない。交渉して断られたなら、その取引を受けるかどうかを、そこで判断すればいい。
独立期の一人社長へ
業務委託契約書を読む力は、独立期に身につけるべき基本装備だ。最初は専門用語に戸惑うが、見るべき6つの条項を知っていれば、致命的な不利は避けられる。
そして覚えておいてほしいのは、契約書を読むのは「相手を疑う」ためではなく「お互いの認識をそろえ、自分を守る」ためだということ。良い取引相手ほど、条件の確認や交渉を嫌がらない。臆さず読み、必要なら交渉する。それが、独立期に取引で潰されないための武器になる。