この記事の結論
人を雇うかどうかは、「継続的・専属的にその人手が必要か」で判断する。単発・変動する仕事なら、業務委託で足りる。雇用は、固定費・社会保険・労務責任という、外注とは桁違いの重さを伴い、簡単には戻せない。だから、雇う前に「業務委託で代替できないか」を必ず先に検討する。雇うなら、覚悟を持って慎重に。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
「雇用」は、外注とは別物
法人化し、事業が回り始めると、人手が足りなくなる。外注で凌いできたが、それでも追いつかない。ここで「人を雇おうか」という考えが浮かぶ。
だが、立ち止まってほしい。雇用は、外注の延長ではない。まったく別物だ。外注(業務委託)は、必要なときに仕事を頼み、終われば関係も終わる。雇用は、毎月の給与を払い続け、社会保険に加入させ、労働法上の責任を負い、簡単には辞めてもらえない。一度雇えば、業績が悪い月も、給与は発生する。雇用は、事業に「固定費」と「重い責任」を背負わせる決断だ。
判断軸は「継続性・専属性」
業務委託と雇用を分ける本質的な軸は、「その人手が、継続的・専属的に必要か」だ。
業務委託が向くケース
- 仕事の量が変動する(繁閑の差が大きい)
- 特定のスキルを、必要なときだけ使いたい
- 専属でなくていい(他の仕事もしている人でいい)
- 成果物・タスク単位で頼める
雇用が向くケース
- 継続的に、安定して人手が要る
- 自社の業務に専念してほしい
- 育成して、長く自社の戦力にしたい
- その都度の発注ではなく、日常的に動いてほしい
仕事が変動するのに雇用すると、暇な時期も固定費がのしかかる。逆に、継続的に必要なのに毎回業務委託で頼むと、かえって非効率で、相手も安定しない。実態に合った形を選ぶ。
雇用に伴う「見えないコスト」
雇用を検討するとき、給与の額だけを見てはいけない。雇用には、給与以外のコストがついてくる。
- 社会保険料の会社負担:給与のおよそ15%前後が、会社の追加負担になる
- 労務管理の手間:勤怠管理、給与計算、各種手続き
- 労働法上の責任:簡単に解雇できない、労働時間や安全への配慮義務
- 固定費化:業績に関わらず、給与は毎月発生する
これらを合わせると、雇用の実コストは、額面の給与よりかなり大きい。一人社長が、本業の片手間でこれらを背負えるか。雇用は、事業の構造そのものを変える決断だと理解する。
「業務委託で代替できないか」を先に問う
雇用を考えたとき、その前に必ず問いたいのが「この必要は、業務委託では満たせないのか」だ。
長期の業務委託、複数の外注先の組み合わせ、一部だけ自動化——雇用以外の選択肢を、先に検討し尽くす。多くの場合、雇用しなくても、外注の工夫で乗り切れる。「一人社長のまま、仕組みで回す」のが、この事業がずっと提案してきた形だ。雇用は、それでもなお足りないときの、最後の選択肢として考える。
「偽装請負」に注意
ここは法的に重要だ。コストが軽いからと、実態は雇用なのに「業務委託」の形をとると、「偽装請負」として問題になる。
判断のポイントは「指揮命令」の有無だ。働く時間・場所・進め方を細かく指示し、専属で従わせているなら、それは契約の名前が業務委託でも、実態は雇用とみなされ得る。業務委託なら、相手の裁量を尊重し、成果で評価する。形式と実態を一致させる。安く済ませようとして実態を偽ると、後で大きな問題になる。
法人期の一人社長へ
人を雇うかどうかは、法人期の大きな分岐点だ。雇用は、人手を増やすだけでなく、事業に固定費と責任を背負わせ、一度進むと簡単には戻せない。
継続的・専属的に必要かで判断し、雇用の見えないコストを把握し、業務委託で代替できないかを先に問う。そして、実態と契約形態を一致させる。雇うと決めるなら、その重さを引き受ける覚悟を持って、慎重に。逆に言えば、急いで雇わずとも、外注の工夫で「一人社長のまま」進める道は、まだ十分にある。