この記事の結論
法人と社長個人の間では、お金の貸し借りが起きやすい。社長が会社に貸す「役員借入金」、会社が社長に貸す「役員貸付金」。これらを曖昧にすると、税務上も経営上も問題になる。鍵は、貸し借りを記録に残し、個人資産と会社資産を明確に分けること。特に、安易に会社からお金を借りるのは避ける。会社とあなたの「貸し借り」を、きちんと整理する。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
会社と個人の間に、貸し借りが生まれる
法人化すると、会社と社長個人は、別人格になる。だが、一人社長の場合、実態としては「自分の会社」なので、会社と個人の間で、お金が行き来しやすい。
- 会社の資金が足りないとき、社長個人がお金を出す
- 社長が個人的に必要なとき、会社のお金を使う
これらは、それぞれ「役員借入金」「役員貸付金」という、会社と個人の間の貸し借りになる。問題は、一人社長だと、これを「自分のお金だから」と曖昧にしがちなことだ。だが、会社と個人は別人格である以上、この貸し借りは、きちんと記録し、整理する必要がある。曖昧にすると、後で問題になる。
「役員借入金」と「役員貸付金」
会社と社長の貸し借りには、向きによって2種類ある。
役員借入金(社長 → 会社)
社長個人が、会社にお金を貸している状態。会社から見れば、社長への借金だ。会社の資金繰りのために、社長が立て替えることは、よくある。これ自体は問題ないが、いくら貸しているのかを、きちんと記録しておく。
役員貸付金(会社 → 社長)
会社が、社長個人にお金を貸している状態。会社から見れば、社長への貸付だ。社長が会社のお金を個人的に使うと、これになる。こちらは、特に注意が要る。
向きによって、意味も注意点も違う。自分が、どちらの状態にあるかを、把握しておく。
「会社からの借り」に注意
特に注意したいのが、会社が社長に貸す役員貸付金だ。これは、安易に増やすと、いくつかの問題を招く。
- 会社が社長から利息を取る必要がある(無利息だと、税務上問題になり得る)
- 金融機関から見て、印象が悪い(会社のお金が社長に流れている、と見られる)
- 額が大きくなると、返済の問題になる
「自分の会社だから」と、会社のお金を個人的に使い、それが役員貸付金として膨らんでいくのは、避けたい。会社のお金は会社のもの、個人が使えるのは役員報酬だけ、という原則を守る。どうしても会社から借りる必要があるなら、きちんと貸付の手続きをし、利息を設定し、記録する。安易な「会社からの借り」は、後で自分を縛る。
個人資産と会社資産を「分ける」
役員借入金・貸付金の問題の根っこは、会社と個人のお金の境界が曖昧なことだ。だから、根本的な対策は、個人資産と会社資産を、明確に分けることだ。
- 会社の口座と個人の口座を分ける(法人口座・法人カードの活用)
- 会社の支出と個人の支出を、混ぜない
- 個人の資産形成と、会社の資産形成を、分けて考える
境界が明確なら、そもそも、曖昧な貸し借りが生まれにくい。会社とあなたは別人格だという原則を、お金の管理で徹底する。これは、取締役の責任を果たすことでもあり、法人のお金管理の基本でもある。
貸し借りを「記録に残す」
会社と個人の間で、お金の貸し借りが生じたら、必ず記録に残す。いくら、いつ、どちらが、貸したのか。
一人社長だと、「自分が分かっていればいい」と、記録を怠りがちだ。だが、会社と個人は別人格であり、その貸し借りは、会社の帳簿に正しく記録されるべきものだ。記録がないと、税務調査で問題になったり、いざというとき(相続、承継など)に、関係が分からなくなったりする。会社と自分の間のお金の動きも、きちんと記録する。曖昧にしない。
不明点は、税理士に確認
役員借入金・貸付金、利息の扱い、個人資産との整理は、税務が絡み、複雑だ。判断に迷うことも多い。ここは、税理士に確認するのが確実だ。
ただし、丸投げはしない。「会社と個人は別人格」「貸し借りは記録する」「会社からの借りは注意」という基本を理解した上で相談すれば、自分の状況に合った整理ができる。会社と個人のお金の関係は、放置すると、後で大きな問題になりやすい。早めに、整理しておく。
法人期の一人社長へ
法人と社長個人の間では、お金の貸し借りが起きやすい。だが、「自分の会社だから」と、それを曖昧にすると、税務上も経営上も問題になる。会社とあなたは、別人格だ。
役員借入金と役員貸付金の違いを理解し、安易な「会社からの借り」を避け、個人資産と会社資産を明確に分け、貸し借りを記録に残す。そして、不明点は税理士に確認する。会社と個人のお金の関係を、きちんと整理しておくことは、取締役としての責任であり、自分を守ることでもある。曖昧にせず、整理する。それが、法人期の一人社長の、お金の規律だ。