この記事の結論
事業に全力を注ぐ一人社長ほど、自分の資産形成は後回しになる。だが、準備期から少額で長期の積立を始めておく価値は大きい。NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度。ポイントは「長期・積立・分散」で、短期で増やそうとしないこと。ただし、投資は必ず生活費と緊急資金を確保した上の余剰で行う。事業の足元を固める一環として捉えたい。
この記事は、Lv.1(準備期)の一人社長に向けて書いています。
一人社長ほど、資産形成が後回しになる
事業を始めると、お金も時間も気力も、事業に集中する。それ自体は正しい。だが、その結果、自分自身の資産形成がまったく手つかずになりがちだ。
会社員には、厚生年金や退職金、企業の福利厚生がある。一人社長には、それがない。将来の備えは、自分で作るしかない。事業が順調なうちに、自分の足元も固めておく——これは、事業に集中することと矛盾しない。むしろ、事業の浮き沈みに備える「もう一つの柱」になる。
その第一歩として、準備期から始めやすいのが、NISAを使った積立だ。
NISAとは「利益が非課税になる」制度
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかる。10万円の利益が出ても、2万円ほどが税金で引かれる。
NISAは、この利益にかかる税金が非課税になる制度だ。NISAの枠内で投資して得た利益は、まるごと自分のものになる。国が「長期の資産形成を応援する」ために用意した、優遇のしくみだと考えればいい。
制度の細かい数字(年間の投資枠など)は改定されることがあるので、始めるときに最新の情報を確認すればいい。本質は「利益が非課税になる、長期の資産形成向けの口座」だと押さえておけば十分だ。
鍵は「長期・積立・分散」
投資と聞くと、値動きを読んで売買し、短期で増やすイメージを持つ人がいる。だが、一人社長が事業の片手間にやるべきは、その逆だ。「長期・積立・分散」、これに尽きる。
長期
数十年単位で持ち続ける前提で考える。短期の値下がりに一喜一憂しない。時間を味方につける。
積立
毎月一定額を、自動で買い続ける。価格が高いときも安いときも淡々と買うことで、買うタイミングを悩まなくて済む。事業で忙しい一人社長に向いた方法だ。
分散
一つの銘柄に集中させず、広く分散された投資先(世界中の株式に分散したインデックスファンドなど)を選ぶ。一つがダメでも、全体で支える。
この3つを守れば、投資に時間も神経も使わずに済む。むしろ「ほったらかし」が正解だ。本業の時間を、投資の値動きチェックに奪われては本末転倒だ。
投資の前に「守り」を固める
ここが、最も大事な注意点だ。投資は、生活費と緊急資金を確保した上の、余剰資金で行う。
準備期・独立期は、収入が不安定だ。事業がうまくいかない時期も来る。そのときに生活を支えるのは、投資ではなく現金だ。生活費の数ヶ月分の現金(緊急資金)を先に確保する。それができてから、余ったお金で投資を始める。
順番を間違えて、緊急資金まで投資に回すと、いざというときに値下がり中の資産を取り崩すことになり、最悪のタイミングで損を確定させる。守りを固めてから、攻める。この順番は絶対だ。
事業と資産形成を「切り離す」
一人社長は、事業の調子と気分が連動しやすい。事業が好調だと気が大きくなり、不調だと不安で動けなくなる。
資産形成は、この事業の浮き沈みから切り離して考えたい。積立は、事業が好調でも不調でも、淡々と続ける。事業がうまくいかない時期こそ、コツコツ積み立てた資産が、心の支えになる。事業という一本の柱だけに自分の将来を賭けない。もう一本、別の柱を、静かに育てておく。
準備期の一人社長へ
準備期は、事業のことで頭がいっぱいになる時期だ。だが、自分自身の将来の備えを、ほんの少しでいいから始めておく。少額の積立を一つ設定するだけで、数十年後の足元はまるで変わる。
NISAで、長期・積立・分散。短期で増やそうとせず、ほったらかしでいい。ただし、生活費と緊急資金を確保した上の余剰で。事業に全力を注ぎながら、自分の足元も静かに固める。それが、長く一人社長を続けるための、準備期からの備えだ。