この記事の結論

下請法は、立場の弱い受注者を守るための法律だ。発注者による一方的な減額、支払いの引き延ばし、買いたたきは、違法になり得る。安定期の一人社長は、自分が守られる側であることを知っておくと同時に、外注する側に回ったときは守る側のルールも負う。両面を押さえておきたい。

この記事は、Lv.3(安定期)の一人社長に向けて書いています。

下請法とは「弱い立場を守る」法律

取引では、発注する側のほうが立場が強くなりがちだ。「次の仕事を出さない」とちらつかせれば、受注側は無理な条件も飲んでしまう。この力の不均衡につけ込んだ不当な扱いを規制するのが、下請法(下請代金支払遅延等防止法)だ。

下請法は、発注者と受注者の資本金の規模などによって適用範囲が決まる。すべての取引に当てはまるわけではないが、大きな会社から仕事を受ける一人社長は、その保護対象になり得る。さらに近年は、フリーランスを保護する新しい法律(いわゆるフリーランス保護法)も整備され、下請法の対象外でも似た保護が及ぶ場面が広がっている。

つまり、安定期の一人社長は「自分は法律で守られる立場かもしれない」と知っておく価値がある。

発注者がやってはいけないこと

下請法は、発注者に対していくつかの禁止行為を定めている。代表的なものを、受注者目線で挙げる。これらをされたら、それは違法かもしれない、というサインだ。

支払いの遅延

下請代金は、納品(受領)から原則60日以内に支払わなければならない。「検収が終わっていないから」を理由に、いつまでも支払いを引き延ばすのは認められない。

一方的な減額

いったん決めた代金を、後から「予算の都合で」と勝手に減らすのは違法だ。受注者に責任がないのに減額する行為は、典型的な禁止行為にあたる。

買いたたき

相場に比べて著しく低い代金を、力関係で押し付けること。「これくらいでやってよ、次もあるから」という形で不当に安く買い叩くのも問題になり得る。

受領拒否・返品

発注したのに、自社の都合で受け取りを拒んだり、受注者に責任がないのに返品したりするのも禁止される。

やり直し・追加作業の押し付け

代金を払わずに、当初の発注になかった作業を無償でやらせる行為も問題になる。

「3条書面」を求めていい

下請法の対象取引では、発注者は発注内容を書面(または電子)で交付する義務がある。これを「3条書面」と呼ぶ。発注内容、代金、支払期日などが明記されたものだ。

口頭発注で曖昧なまま進められそうなときは、「発注書をください」と求めてよい。書面があれば、後の減額や追加要求に対して「最初の発注はこうでしたよね」と言える。書面を求めることは、受注者の正当な権利だ。

自分が「外注する側」になったら

安定期は、自分が人に発注する側に回り始める時期でもある。ここで立場が逆転する。あなたが発注者として、下請法やフリーランス保護のルールを守る側になる

外注先に対して、

  • 決めた代金を後から減らさない
  • 支払いを不当に引き延ばさない
  • 相場を無視した買いたたきをしない
  • 発注内容を書面で明確に伝える

これらは、かつて自分が守られたかった扱いそのものだ。自分がされて嫌なことを、立場が強くなった途端にやってしまう——これは信用を一気に失う。守られる側の経験を、守る側になったときに活かす。それが、長く付き合える関係を作る。

安定期の一人社長へ

下請法は、一人社長にとって「自分を守る盾」であり、同時に「守るべきルール」でもある。

理不尽な減額や支払い遅延に遭ったとき、「これは違法かもしれない」と知っているだけで、泣き寝入りせずに済む。相談先(公正取引委員会や中小企業向けの相談窓口)もある。一方で、自分が発注する側になったら、同じルールを守る。

法律をすべて暗記する必要はない。「不当な扱いには根拠がある」「自分も発注側として守る」——この感覚を持っておくことが、安定期の取引を健全に保つ。