この記事の結論
事業を伸ばすには営業が要るが、自分が苦手、あるいは時間がない場合、営業の外注を考える。だが、営業の外注は、難しい。鍵は、営業の「どの部分」を外注するか切り分け、自社の価値を語れる相手を見極めること。「丸投げ」では、たいていうまくいかない。成果の測り方と報酬を決め、まず小さく試す。「売る」を人に任せるには、慎重な設計が要る。
この記事は、Lv.5(拡大期)の一人社長に向けて書いています。
「営業を任せたい」という願望
事業を伸ばすには、営業——見込み客を見つけ、価値を伝え、成約につなげる——が欠かせない。だが、一人社長の中には、「営業が苦手」「営業に時間を割けない」という人が多い。本業は得意でも、売り込むのは気が進まない。
そこで出てくるのが、「営業を外注したい」という願望だ。営業が得意な人に任せて、自分は本業に集中したい。これは、自然な発想だ。だが、営業の外注は、他の業務の外注より、ずっと難しい。安易に丸投げすると、うまくいかず、お金と時間を無駄にする。営業を任せるなら、慎重な判断と設計が要る。
営業の「どの部分」を外注するか
営業と一口に言っても、いくつもの工程がある。まず、営業の「どの部分」を外注するのかを、切り分ける。
- リスト作成・アポ取り:見込み客を見つけ、接点を作る
- 商談・提案:価値を伝え、交渉する
- クロージング:成約を決める
- その後のフォロー
これらのうち、どこを任せ、どこを自分でやるのか。たとえば、アポ取りまでを外注し、商談は自分でやる、という分け方もある。営業全体を丸ごと任せるのは難しくても、一部の工程なら、外注しやすい。まず、自分の営業を工程に分解し、外注に適した部分を見極める。
「自社の価値を語れる相手」か
営業の外注で、最も難しいのが、自社の価値を、自分の代わりに語れるかだ。
一人社長の事業の価値は、しばしば、本人の専門性や、人柄、こだわりに宿っている。それを、外部の営業が、本人と同じように、あるいは本人以上に、語れるか。ここが、営業外注の成否を分ける。
自社の価値を理解せず、表面的に売り込むだけの営業では、見込み客に響かないし、ミスマッチな顧客を連れてくる。営業を任せるなら、自社の価値を深く理解し、それを自分の言葉で語れる相手を選ぶ。これは、簡単ではない。だからこそ、相手の見極めが、重要になる。
「丸投げ」では、うまくいかない
営業外注で、最も多い失敗が、丸投げだ。「営業は全部おまかせ」と、自社の情報も、価値も、十分に共有せずに任せる。これでは、たいていうまくいかない。
営業を任せるなら、自社の価値、ターゲット、強み、よくある質問への答えを、徹底的に共有する。外部の営業が、自社を深く理解できるように、情報を惜しまず渡す。そして、最初は、一緒に動いて、すり合わせる。丸投げではなく、二人三脚で、営業を作り上げていく。これは、ディレクションや、情報共有の考え方と、同じだ。営業こそ、丸投げは禁物だ。
成果の測り方と報酬を決める
営業の外注では、成果の測り方と、報酬の設計を、最初に決めておく。
何をもって成果とするか(アポ数、商談数、成約数、売上)。報酬は、固定か、成果に応じてか、その組み合わせか。成果報酬にすると、営業側のモチベーションは上がるが、無理な売り込みや、質の低い顧客を連れてくるリスクもある。固定にすると、成果が出なくてもコストがかかる。
自社に合った、成果の測り方と報酬のバランスを設計する。曖昧なまま始めると、後でもめる。これは、評価・報酬の設計とも、つながる。営業の外注は、成果と報酬の設計が、特に重要だ。
まず「小さく試す」
営業の外注は、難しく、リスクもある。だから、いきなり本格的に任せず、まず小さく試す。
一部の工程、限られた範囲、短い期間で、試してみる。その相手が、自社の価値を語れるか、良い顧客を連れてくるか、ミスマッチを起こさないかを確認する。効果があれば、徐々に広げる。なければ、見直す。営業の外注は、当たり外れが大きい。小さく試して、見極めてから、本格化する。これは、外注全般に通じる、慎重さだ。
拡大期の一人社長へ
事業を伸ばすには営業が要るが、自分が苦手だったり、時間がなかったりする場合、営業の外注は、有力な選択肢になる。だが、営業の外注は、他の業務より難しく、安易な丸投げは、うまくいかない。
営業のどの部分を外注するか切り分け、自社の価値を語れる相手を見極める。丸投げせず情報を共有し、成果の測り方と報酬を決め、まず小さく試す。「売る」という、事業の根幹に関わる仕事を人に任せるには、慎重な設計が要る。うまく設計できれば、営業の外注は、自分の苦手や時間の制約を超えて、事業を伸ばす力になる。営業を任せられるかの判断を、慎重に、しかし前向きに検討したい。