この記事の結論

個人事業主は、会社員のような手厚い保障がない。病気やケガで働けなくなれば、収入が止まる。だから、その足りない部分を、自分で補う必要がある。鍵は、「働けなくなったとき」のリスクを考え、公的保障で足りない部分を見極めること。保険だけでなく、貯蓄や共済で備える選択肢もある。必要な保障に絞り、入りすぎない。自分に本当に必要な備えを、見極める。

この記事は、Lv.3(安定期)の一人社長に向けて書いています。

会社員にあった保障が、ない

会社員だったときは、気づかないうちに、手厚い保障に守られていた。病気で長く休めば傷病手当金、ケガをすれば労災、手厚い厚生年金。これらが、いざというときの支えになっていた。

個人事業主になると、これらの多くが、なくなる。病気やケガで働けなくなっても、傷病手当金はない(国民健康保険には原則ない)。労災もない。年金も、国民年金のみで、会社員より薄い。つまり、いざというときの保障が、会社員より格段に手薄だ。この事実を、まず自覚する。そして、足りない部分を、自分で補う必要がある。安定期は、この備えを考えるべき時期だ。

「働けなくなったとき」を考える

個人事業主にとって、最大のリスクは何か。それは、自分が働けなくなることだ。

一人で事業をしている以上、自分が病気やケガで働けなくなれば、収入はそのまま止まる。代わりがいない。これは、一人社長にとって、最も大きく、最も現実的なリスクだ。だから、保険を考えるときも、まず「働けなくなったときに、どう生活を支えるか」を中心に考える。

死亡保障も大事だが、それ以上に、「生きているが働けない」期間を、どう乗り切るか。ここに、個人事業主の保険の、考えるべき核心がある。

「公的保障で足りない部分」を見極める

保険を考える前に、まず、公的な保障で、何がカバーされるかを確認する。そして、足りない部分を見極める。

個人事業主にも、国民健康保険、国民年金、(条件により)障害年金など、公的な保障はある。これらで、どこまで支えられるのか。その上で、足りない部分——たとえば、働けない期間の生活費、医療費の自己負担——を、どう補うかを考える。

やみくもに保険に入るのではなく、「公的保障で足りない、この部分を補いたい」という目的を、明確にする。足りない部分が分かって初めて、必要な保険が見えてくる。

「保険以外」の備えも検討する

足りない部分を補う方法は、保険だけではない。貯蓄や共済も、有力な選択肢だ。

  • 貯蓄(緊急資金):働けない期間を、貯えで乗り切る
  • 小規模企業共済:廃業・引退時の備え(退職金代わり)にもなる
  • 共済制度:比較的手頃な保障

特に、十分な緊急資金があれば、短期的に働けない期間は、それで乗り切れる。保険は、貯蓄では賄いきれない、大きなリスクに備えるもの、と捉える。「保険に入る」が唯一の答えではない。貯蓄・共済・保険を組み合わせて、自分に合った備えを作る。これは、緊急資金や小規模企業共済の考え方とも、つながる。

「入りすぎない」

保険を考えるとき、注意したいのが、入りすぎないことだ。不安だからと、あれこれ保険に入ると、保険料の負担が、家計を圧迫する。

保険は、必要な保障に絞る。「あったら安心」ではなく「これがないと、本当に困る」リスクに絞って備える。不安につけ込む保険の勧誘もある。提案を鵜呑みにせず、自分に本当に必要かを判断する。これは、専門家のポジショントークを見抜く姿勢とも、つながる。保険料も、毎月の固定費だ。必要十分に絞ることが、賢い備えだ。

安定期の一人社長へ

個人事業主は、会社員のような手厚い保障がない。病気やケガで働けなくなれば、収入が止まる。この手薄さを自覚し、足りない部分を、自分で補う必要がある。

「働けなくなったとき」のリスクを中心に考え、公的保障で足りない部分を見極める。保険だけでなく、貯蓄や共済で備える選択肢も検討し、必要な保障に絞って、入りすぎない。安定期は、収入が安定し、将来のリスクに目を向ける余裕が出てくる時期だ。会社員時代の保障がない分を、自分で設計して補う。それが、一人で事業を続ける上での、安心の土台になる。やみくもにではなく、自分に本当に必要な備えを、見極めて持つ。それが、安定期の一人社長の、保険の考え方だ。