この記事の結論
準備期に、弁護士に依頼する高い契約書は要らない。信頼できるテンプレートで十分だ。ただし、テンプレをそのまま使うのではなく「業務範囲・金額・納期・修正の扱い」の4項目だけは、自分の取引に合わせて必ず埋める。ここさえ押さえれば、最初のトラブルの大半は防げる。
この記事は、Lv.1(準備期)の一人社長に向けて書いています。
「立派な契約書」は、まだいらない
仕事を始めると「契約書、ちゃんとしないと」と不安になる。だが、準備期にお金をかけてオーダーメイドの契約書を作る必要はない。
理由はシンプルだ。準備期の取引は、金額も規模もまだ小さい。そこに数万円の契約書作成費をかけるのは、コストとリスクが見合わない。世の中には、業種別の契約書テンプレートが無料・有料で数多く出回っている。まずはそれをベースにすればいい。
大事なのは「契約書があること」そのものより、「何を取り決めたかが、文字で残っていること」だ。口約束を避け、認識のズレを文字にする。テンプレートはそのための十分な道具になる。
それでも外せない4項目
テンプレをそのまま使うと、自分の取引に合わない部分が残る。最低限、次の4項目だけは自分の案件に合わせて埋める。トラブルの大半は、この4つの曖昧さから生まれる。
1. 業務内容・範囲
「何をやって、何をやらないか」を具体的に書く。ここが曖昧だと、後から「これも含まれますよね?」という追加作業の押し付け合いになる。Web制作なら「何ページ作るか」「何を含むか」、デザインなら「何案出すか」まで書く。範囲を決めることは、自分を守ることだ。
2. 金額・支払時期・支払方法
いくらを、いつ、どうやって受け取るか。「納品後30日以内に指定口座へ振込」のように具体的に。着手金を取るなら、その割合とタイミングも書く。お金の条件が曖昧だと、入金が遅れたときに何も言えなくなる。
3. 納期・検収
いつまでに納品し、相手がいつ確認(検収)するか。検収の期限を決めておかないと、「まだ確認中」と言われて支払いが宙に浮く。「納品後7日以内に検収」のように、相手の確認にも期限を設ける。
4. 修正回数・追加費用
これは特に見落とされやすい。修正が無制限だと思われると、延々と直しを求められる。「修正は2回まで、それ以降は追加費用」のように、線引きを最初に書いておく。追加発生時の費用の決め方も添えておくと、もめにくい。
テンプレートの選び方
テンプレートなら何でもいい、わけではない。次の点を意識して選ぶ。
- 出どころが信頼できるか:公的機関や業界団体、信頼できる事業者が公開しているものを選ぶ
- 自分の業種に合っているか:制作系、コンサル系、物販系で必要な条項は違う。近い業種のものを使う
- 古すぎないか:法改正(インボイス、電子帳簿、フリーランス保護の法律など)に対応した新しいものを選ぶ
選んだら、丸写しにせず、前述の4項目を自分の取引に合わせて書き換える。これがテンプレを「自分の契約書」にする作業だ。
署名・捺印より「合意の記録」
紙にハンコを押すことにこだわる必要はない。今は電子契約サービスを使えば、PDFにオンラインで署名でき、記録も残る。メールでの合意でも、内容が明確なら証拠になる。
形式より、「両者が、同じ内容に合意したことが残っているか」が本質だ。準備期は、重い形式より、軽くても確実な合意の記録を優先する。
準備期の一人社長へ
契約書というと身構えるが、準備期にやるべきことは難しくない。信頼できるテンプレートを選び、4項目を自分の取引に合わせて埋める。それだけで、最初のトラブルはほとんど防げる。
「立派な契約書を作らなきゃ」と止まってしまうより、「テンプレ+4項目」で軽く始めるほうが、ずっと実用的だ。契約書は、お金をかけた証明書ではなく、認識をそろえる道具。準備期は、その役割を果たせれば十分だ。