この記事の結論
事業が大きくなると、経営者個人だけでなく、家族も事業のリスクを背負うことになる。借入の個人保証、事業の浮き沈み、万一の事態。これらから家族を守るには、事業と家計を分け、リスクの状況を家族と共有し、万一の備えを設計する必要がある。事業のリスクから、家族の生活基盤を守る。それも、拡大期の経営者の責任だ。
この記事は、Lv.5(拡大期)の一人社長に向けて書いています。
事業のリスクが、家族に及ぶ
事業が小さいうちは、リスクも限定的だった。だが、拡大期になり、借入が増え、取引の規模が大きくなると、事業のリスクも大きくなる。そして、そのリスクは、経営者個人だけでなく、家族にも及ぶ。
事業がうまくいかなくなったとき、借入の返済が滞ったとき、経営者に万一のことがあったとき。これらは、家族の生活を直撃する。経営者が背負うリスクは、家族が一緒に背負うリスクでもある。拡大期は、この事実を直視し、事業のリスクから家族を守る設計を、考えるべき時期だ。
「個人保証・借入」を家族と共有
事業のリスクで、家族に最も大きく影響するのが、借入と個人保証だ。
法人で融資を受けるとき、経営者個人が連帯保証人になる(個人保証)ことがある。この場合、もし会社が返済できなくなれば、経営者個人が、その債務を背負う。そして、それは家族の生活にも、直接影響する。
こうした借入や個人保証の状況は、家族と共有しておく。家族が知らないうちに、大きなリスクを背負っている状態は、危うい。どれくらいの借入があり、どんな保証をしているか。家族に開示し、いざというときの影響を、一緒に理解しておく。隠さず共有することが、家族を守る前提だ。
「事業と家計」を分ける
家族を事業のリスクから守る、基本的な考え方が、事業と家計(家族の生活基盤)を、できるだけ分けることだ。
事業のお金と、家族の生活のお金を、明確に分ける。家族の生活を支える資産(生活費、住まい、教育費など)は、事業のリスクから切り離して、守れるようにしておく。事業に、家族の生活基盤のすべてを賭けない。
事業が傾いても、家族の生活の最低限は守られる。そういう構造を、意識して作る。これは、資産を事業に集中させない、というポートフォリオの考え方とも、つながる。すべての卵を、事業という一つのカゴに入れない。
「万一の備え」を設計する
経営者に万一のことがあったとき、家族の生活と、事業の後始末を、どう支えるか。これも、設計しておく。
- 経営者が亡くなった・働けなくなったときの、家族の生活の備え(保険、資産)
- 事業の借入が、家族にどう影響するか
- 事業を畳む、引き継ぐ場合の、家族の負担
これらに備えて、保険や資産を設計する。抱えるものが大きい拡大期は、万一の備えも、それに見合ったものが要る。これは、人間ドック・保険の設計や、個人事業の「もしも」の備えとも、つながる。万一のとき、家族が路頭に迷わないように、備えておく。
家族に「事業の状況」を開示する
家族向けのリスク管理で、土台になるのが、家族への開示だ。
事業の状況、リスク、借入、万一のときの備え。これらを、家族に開示し、共有しておく。家族が、事業の実態を知らないと、いざというとき、何が起きているか分からず、対応もできない。
良いときも悪いときも、家族と情報を共有する。経営者一人で抱え込まず、家族をパートナーとして、リスクを一緒に把握する。開示は、家族を不安にさせるためではなく、いざというときに、家族が冷静に対応できるようにするためだ。これは、家計を家族と共有することの、拡大期版でもある。
拡大期の一人社長へ
事業が大きくなると、経営者個人だけでなく、家族も事業のリスクを背負う。借入の個人保証、事業の浮き沈み、万一の事態。これらから家族を守ることは、拡大期の経営者の、大切な責任だ。
事業のリスクが家族に及ぶと自覚し、個人保証・借入の状況を家族と共有する。事業と家計を分け、万一の備えを設計し、家族に事業の状況を開示しておく。家族は、事業の成功を一緒に喜ぶパートナーであると同時に、リスクも一緒に背負う存在だ。だからこそ、リスクから家族の生活基盤を守る設計を、きちんとしておく。事業を大きくする責任と、家族を守る責任。その両方を引き受けることが、拡大期の一人社長の、成熟した経営だ。