この記事の結論
外注に任せて期待外れのものが上がってくるとき、原因は相手の能力ではなく、指示の仕方であることが多い。「いい感じに」では、いい感じにはならない。鍵は、目的を共有し、完成イメージを具体例で示し、迷ったときの優先順位を伝えること。ディレクションは、丸投げでも細かい管理でもなく、相手が力を発揮できる「伝え方」の技術だ。
この記事は、Lv.3(安定期)の一人社長に向けて書いています。
「思ったのと違う」の原因
外注を使い始めると、よくぶつかるのが「思っていたのと違うものが上がってきた」だ。これを、つい相手の能力のせいにしたくなる。だが、多くの場合、本当の原因は、こちら側の指示の仕方にある。
人に仕事を頼むとき、自分の頭の中にあるイメージは、言葉にしないと相手には伝わらない。自分には「当たり前」のことが、相手には分からない。曖昧な指示を出せば、相手は推測で進めるしかなく、ずれが生まれる。ディレクション(指示・進行管理)が下手だと、どんなに優秀な外注先でも、力を発揮できない。良い成果は、良い指示から生まれる。
「いい感じに」は、指示ではない
外注でずれが生まれる典型が、「いい感じにお願いします」「おまかせします」という指示だ。一見、相手の裁量を尊重しているようで、実は何も伝えていない。
「いい感じ」の中身は、人によって違う。あなたの「いい感じ」と、相手の「いい感じ」は別物だ。だから、「いい感じに」と頼むと、相手の解釈で進み、あなたのイメージとずれる。そして「違う」となる。これは、相手のせいではない。伝えるべきことを伝えていないこちらの問題だ。「いい感じに」を、具体的な言葉に翻訳するのが、ディレクションの出発点だ。
まず「目的」を共有する
具体的な指示の前に、最も大事なのが、目的の共有だ。「何のために、これを作るのか」。
目的が分かっていれば、相手は、細かい指示がない部分も、目的に沿って判断できる。逆に、目的を知らされず、作業の手順だけを指示されると、相手は応用が利かず、言われたことしかできない。「この資料は、初めての顧客に安心してもらうためのものです」と目的を伝えれば、相手はその方向で工夫してくれる。目的の共有は、細かい指示を補い、相手の力を引き出す。
完成イメージを「具体例」で示す
言葉だけで完成イメージを伝えるのは難しい。だから、具体例で示す。
「こういうトーンで」と言葉で言うより、「この参考例のような雰囲気で」と実例を見せたほうが、何倍も正確に伝わる。過去の良い成果物、参考になるサンプル、「これは良い」「これはNG」の例。具体例は、言葉の何倍もの情報を伝える。完成イメージを、自分の頭の中だけに置かず、相手と共有できる形(例)にして渡す。これだけで、ずれは大幅に減る。
「迷ったときの優先順位」を伝える
どんなに丁寧に指示しても、相手が判断に迷う場面は必ず出てくる。そのとき、何を優先すればいいかを、あらかじめ伝えておく。
「スピードと品質なら、まず品質を」「迷ったら、シンプルなほうを」。優先順位が分かっていれば、相手はあなたに逐一確認しなくても、あなたの望む方向で判断できる。これがないと、相手は迷うたびに手が止まるか、あなたの意図と違う選択をする。判断の軸を共有しておくことが、細かく管理しなくても回る秘訣だ。
修正は「具体的な指示」で返す
上がってきたものを修正するときも、伝え方が重要だ。「なんか違う」「いまいち」といった感想だけを返しても、相手は何をどう直せばいいか分からない。
修正は、感想ではなく具体的な指示で返す。「ここを、こう変えてほしい」「この部分は、こういう理由で、こうしたい」。具体的であれば、相手は的確に直せる。そして、できれば、なぜそう直したいのかの理由も添える。理由が分かれば、相手は次回から、その方向を先回りできる。修正のやり取りは、相手を育て、次の精度を上げる機会でもある。
安定期の一人社長へ
外注を活かせるかどうかは、相手の能力以上に、こちらのディレクション次第だ。「いい感じに」では、いい感じにはならない。良い成果は、良い指示から生まれる。
目的を共有し、完成イメージを具体例で示し、迷ったときの優先順位を伝え、修正は具体的な指示で返す。ディレクションは、丸投げと細かい管理の中間にある、「相手が力を発揮できるように伝える」技術だ。これが身につくと、外注はあなたの期待どおり、いや期待以上の成果を返してくれる。人に任せる力の核心は、伝える力にある。安定期に、この技術を磨いておきたい。