この記事の結論
法人化すると、個人の確定申告は「法人決算」に変わる。計算は複雑になり、納める税金も法人税・住民税・事業税と複数になる。申告期限は、決算月の原則2ヶ月以内。赤字でも住民税の均等割は発生する。決算は税理士に頼むのが現実的だが、自分は全体像を理解しておく。それが、税理士に丸投げせず渡り合うための土台になる。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
確定申告が「決算」に変わる
個人事業のときは、1年分の所得を確定申告すれば済んだ。会計ソフトの案内に従えば、自分でもやり切れた。
法人化すると、これが「法人決算」に変わる。会社の1年間の業績をまとめ、貸借対照表や損益計算書といった決算書類を作り、それをもとに法人税などを計算して申告する。個人の確定申告に比べて、格段に複雑だ。簿記や税務の専門知識が必要になる場面が増え、多くの一人社長が、ここで税理士に頼ることになる。だが、頼むにしても、何が行われているかは理解しておきたい。
法人が納める「複数の税金」
個人は所得税が中心だったが、法人は複数の税金を納める。主なものを、ざっくり掴んでおく。
法人税
会社の利益(所得)にかかる、国の税金。法人税の中心だ。
法人住民税
都道府県・市町村に納める地方税。利益に応じた部分(法人税割)と、利益に関係なくかかる部分(均等割)がある。
法人事業税
事業を行うことに対してかかる地方税。
これらを合わせた実質的な税負担の割合を「実効税率」と呼ぶ。法人の利益に対して、おおむね3割前後がこれらの税金になる、というイメージを持っておくと、資金計画が立てやすい。
申告期限は「決算月から2ヶ月」
法人決算には、明確な期限がある。原則として、決算月の翌日から2ヶ月以内に、申告と納税を行う。
たとえば3月決算なら、5月末が期限だ。この期限に向けて、決算書を作り、税額を計算し、申告書を提出し、納税する。期限を過ぎると、加算税や延滞税のペナルティがある。決算月をいつにするかは設立時に決めるが、繁忙期と決算・申告作業が重ならないよう設定するのが賢い。
なお、決算とは別に、法人には決算月に関係なく毎年やってくる事務もある。給与や報酬などの支払いを税務署へ報告する法定調書合計表は1月末が期限で、年明けの事務として決算とは別枠で押さえておく。
「赤字でも税金がかかる」
法人税で、個人と大きく違う点がある。赤字でも、納める税金があることだ。
法人住民税の「均等割」は、利益が出ていなくても、会社が存在する限り発生する。年間で数万円規模だが、赤字だから税金ゼロ、とはならない。「会社を持っているだけでかかる固定費」として、最低限のコストがある。これは、休業中でも基本的にかかる。法人を持つことの、最低限の維持費だと理解しておく。
経費の考え方も変わる
法人になると、経費(損金)の考え方も個人とは変わる。役員報酬の扱い、経費にできるもの・できないもの、私費との線引き——個人事業のときの感覚が通用しない部分が出てくる。
特に、社長個人と会社は別人格なので、「会社のお金」と「社長個人のお金」を明確に分ける必要がある。個人事業のように曖昧にすると、税務上問題になる。法人の経費は、より厳密な管理が求められる。
税理士に頼む、でも丸投げしない
法人決算は、独学でやり切るには重い。多くの一人社長は、ここで税理士と顧問契約を結ぶ。それは合理的な判断だ。決算・申告という専門性の高い作業を任せ、自分は本業に集中する。
ただし、これまでの記事でも繰り返してきたとおり、丸投げはしない。決算書が何を表しているか、自社の税金がどう計算されているか、利益はどこで出ているか——これらを理解した上で、税理士と話す。数字を自分でも掴んでいれば、税理士の提案を判断でき、節税や経営の相談も深くできる。決算を税理士に任せても、自社の数字の責任者は、最後まであなただ。
法人期の一人社長へ
法人決算は、法人化して最初にぶつかる「個人とは別世界」の手続きだ。複数の税金、2ヶ月の期限、赤字でもかかる均等割、厳密な経費管理。最初は戸惑うが、全体像を掴めば、過度に恐れるものではない。
決算そのものは税理士に頼んでいい。だが、自分の会社の数字と税金の仕組みは、自分で理解しておく。その理解があれば、税理士は丸投げの相手ではなく、対等に相談できるパートナーになる。法人の数字を自分の言葉で語れること——それが、法人期の一人社長の、お金まわりの自立だ。