この記事の結論

開業届を出せばどんな事業でも始められる、わけではない。業種によっては別途「許認可」が必要で、無許可営業は罰則の対象になる。安定期で事業を広げるとき、新しい分野に手を出す前に「それは許認可が要る業種か」を必ず確認する。要るなら、取得には時間がかかるので、営業開始から逆算して動く。

この記事は、Lv.3(安定期)の一人社長に向けて書いています。

なぜ安定期にこの話が出てくるのか

準備期・独立期は、開業届だけで始められる仕事(Web制作、デザイン、ライティング、コンサルなど)をしている人が多い。だから許認可を意識する場面が少ない。

ところが安定期になり、事業を広げ始めると話が変わる。物販を始める、店舗を持つ、人を紹介する、他社の業務を請ける——こうした横展開の中に、許認可が必要な業種が紛れ込んでいることがある。「開業届を出しているから大丈夫」と思い込んで始めると、知らないうちに違法営業になりかねない。

「許認可」には種類がある

ひとくちに許認可といっても、ハードルが違ういくつかの種類がある。要否だけでなく、どの種類かで手間が変わる。

届出

行政に「やります」と知らせるだけ。比較的軽い。受理されれば営業できる。

登録

一定の要件を満たして名簿に登録する。届出より要件が明確。

許可

行政の審査を受けて「許可」をもらう必要がある。要件が厳しく、時間もかかる。飲食店営業や建設業などが代表例。

免許・認可

最も重い類型。国や都道府県の免許・認可が要る。酒類の販売、人材派遣などが該当する。

自分の事業がどれに当たるかで、準備の重さがまるで違う。まず種類を見極める。

許認可が必要になりやすい代表例

一人社長が横展開で触れやすい業種を挙げる。これらに近いことを始めるなら、要確認だ。

  • 飲食・食品の製造販売:保健所の営業許可。菓子やお弁当の販売も対象になり得る
  • 中古品の売買(せどり・リユース):古物商許可(警察署)。継続して仕入れて売るなら必要
  • 人材の紹介・派遣:有料職業紹介事業の許可、労働者派遣事業の許可
  • 建設・リフォーム:一定金額以上の工事は建設業許可
  • 酒類の販売:酒類販売業免許
  • 民泊・宿泊:住宅宿泊事業の届出や旅館業の許可

たとえば「不用品をまとめて仕入れて売る」を事業化すると、古物商許可が要る。Web制作の流れで「ネットショップの商品も仕入れて売る」と広げたら、扱う物によっては許可が絡む。何気ない横展開に落とし穴がある。

確認の手順

ステップ1:業種が許認可対象かを調べる

新しい事業のキーワードに「許可」「免許」「登録」を足して調べる、あるいは中小企業向けの公的な相談窓口(商工会議所、よろず支援拠点など)に聞く。ここで「要る/要らない」をまず白黒つける。

ステップ2:管轄の窓口を特定する

許認可は種類ごとに窓口が違う。飲食なら保健所、古物商なら警察署、建設業なら都道府県、というように。管轄を間違えると話が進まない。種類が分かったら、正しい窓口を確認する。

ステップ3:期間と費用を見積もる

許可型は、申請から取得まで数週間〜数ヶ月かかることがある。登録免許税や手数料も発生する。「来月から始めよう」と思っても、許可が下りるまで営業できない。取得期間を見込んでスケジュールを組む。

取得「前」に営業を始めない

最も大事な原則がこれだ。許認可が必要な事業は、取得前に営業を始めてはいけない。無許可・無届けでの営業は、罰則や事業停止の対象になる。

「申請中だから少しくらい」も通用しない。許可が下りる前に売上を立てると、それ自体が違反になる。安定期は信用が資産になる時期だ。一度の無許可営業で信用を失うのは、割に合わない。

安定期の一人社長へ

許認可は、知らなければ踏みやすい地雷だ。だが、確認すること自体は難しくない。新しい事業を始める前に「これは許認可が要る業種か」と一度立ち止まる。この習慣さえあれば、まず踏み外さない。

逆に言えば、確認を怠ると、良かれと思った事業拡大が違法営業になる。事業を広げる安定期だからこそ、横展開の前のひと手間——許認可の確認を、ルーティンにしておきたい。