この記事の結論
法人化したら、法人口座と法人カードを作り、会社と個人のお金を完全に分ける。個人事業のときの「だいたい分ける」では済まない。会社とあなたは別人格であり、お金を混ぜると、税務上も経理上も問題になる。事業のお金はすべて法人口座を通し、経費は法人カードで払う。この分離が、法人期のお金管理の出発点だ。
この記事は、Lv.4(法人期)の一人社長に向けて書いています。
「だいたい分ける」では済まない
個人事業のときも、事業用と生活用の口座を分けることは勧められた。だが、実際には「だいたい分ける」程度で、多少混ざっても、申告のときに整理すれば済んだ。
法人化すると、これが許されなくなる。会社とあなたは、法律上、別人格だ。会社のお金は会社のもので、あなた個人のお金とは厳密に区別される。この区別が曖昧だと、税務調査で問題になったり、経理が混乱したりする。法人期の最初にやるべきは、この「完全な分離」のための器を作ること——それが、法人口座と法人カードだ。
法人口座を作り、すべてそこを通す
まず、法人名義の銀行口座を開設する。そして、事業に関するお金の出入りは、すべてこの法人口座を通す。
- 売上の入金は、法人口座へ
- 経費や仕入れの支払いは、法人口座から
- 役員報酬は、法人口座から個人の口座へ振り込む
この「すべて法人口座を通す」を徹底すると、会社のお金の流れが、口座の記録としてきれいに残る。経理も決算も楽になり、お金の流れが透明になる。個人の口座と混ぜないことが、法人のお金管理の大原則だ。
なお、法人口座の開設には審査がある。登記事項証明書、定款、本人確認書類などが必要で、事業実態の確認を求められることもある。設立後、早めに準備して申し込む。
法人カードで経費を払う
法人口座とセットで作りたいのが、**法人カード(法人名義のクレジットカード)**だ。経費の支払いを、法人カードに集約する。
法人カードで経費を払うと、
- 何にいくら使ったかが、明細として自動で記録される
- 会計ソフトと連携すれば、経費の入力がほぼ自動になる
- 個人のカードと混ざらず、経費が明確になる
経費を個人のカードや現金で払うと、後で「これは経費、これは私費」と仕分ける手間がかかり、混同のもとになる。法人カードに集約すれば、その手間が消え、経費の管理が一気に楽になる。
会社のお金を、私用に使わない
法人のお金管理で、最も大事な規律がこれだ。会社のお金を、私的に使わない。
会社の口座にお金があっても、それはあなた個人の自由になるお金ではない。あなたが個人的に使えるのは、役員報酬として受け取った分だけだ。会社のお金で個人の買い物をする、会社の口座から勝手にお金を引き出す——これは、経理上も税務上も問題になる。
どうしても会社のお金を個人が使う必要がある場合は、「役員貸付金」など、明確な形で記録する。曖昧に持ち出さない。会社とあなたの間のお金の移動は、すべて筋を通して、記録に残す。
会計ソフトと連携させる
法人口座と法人カードを作ったら、会計ソフトと連携させる。これで、お金の流れが自動で会計ソフトに取り込まれる。
法人の経理は、個人事業より複雑だ。だからこそ、自動連携で手入力を減らすことの効果が大きい。口座の入出金、カードの利用明細が自動で記録されれば、記帳の手間が激減し、決算の準備も楽になる。器(口座・カード)を作ったら、それを会計の仕組みにつなぐところまでをセットで行う。
法人期の一人社長へ
法人化は、お金の管理のルールが変わる節目だ。会社とあなたは別人格になり、お金は「だいたい分ける」では済まず、「完全に分ける」ことが求められる。
法人口座を作ってすべての事業のお金をそこに通し、法人カードで経費を払い、会社のお金を私用に使わない。そして、会計ソフトと連携させる。この分離の仕組みを最初に作っておくと、法人期のお金管理は、ぐっと楽に、そして安全になる。会社とあなたのお金を厳密に分けることは、面倒に見えて、実は自分を守り、経理を軽くする、法人期の基本動作だ。