この記事の結論
一人社長にとって、データの喪失は、事業の喪失に直結する。PCの故障、誤削除、ウイルス——データは必ず失われ得る。鍵は、「失われる前提」で備えること。重要データを複数の場所に保存し、自動でバックアップする仕組みを作る。そして、いざというとき本当に復元できるか、一度試しておく。データを守ることは、事業を守ることだ。
この記事は、Lv.3(安定期)の一人社長に向けて書いています。
データが消えたら、誰も助けてくれない
一人社長の仕事の成果は、ほぼすべてデータの中にある。制作物、顧客の情報、契約書、請求書、これまでの仕事の蓄積。もし、これらが一瞬で消えたら——事業は、立ち行かなくなる。
会社なら、情報システムの担当者がいて、バックアップ体制が整っている。だが一人社長は、自分で備えなければ、誰も助けてくれない。PCが壊れた、データを誤って消した、ウイルスにやられた——そのとき、復元してくれる人はいない。データの喪失は、一人社長にとって、事業存続に関わる重大なリスクだ。安定期に、ここを固めておきたい。
「データは失われる」前提に立つ
バックアップの出発点は、ある覚悟だ。「データは、必ず失われ得る」と考えること。
「自分は大丈夫」「今まで問題なかった」は、何の保証にもならない。PCは、ある日突然壊れる。ファイルは、一瞬の操作ミスで消える。ウイルスやランサムウェアは、データを人質に取る。これらは、誰にでも、いつでも起こり得る。「失われるかもしれない」ではなく「いつか失われる」前提に立つ。この前提があるかどうかで、備えの本気度が変わる。
「複数の場所」に保存する
バックアップの基本原則は、重要なデータを、複数の場所に保存することだ。一か所にしかないデータは、その一か所が壊れたら、終わりだ。
情報管理の世界には「3-2-1ルール」という考え方がある。データを3つ持ち、2種類の媒体に保存し、1つは別の場所に置く、というものだ。一人社長がそこまで厳密にやらなくても、考え方は使える。「同じデータを、最低2か所以上に持つ」。手元のPCと、クラウド。手元のPCと、外付けの保存先。一か所が失われても、別の場所に残っている。この冗長性が、データを守る。
「自動」でバックアップする
バックアップで最も大事なのは、自動化だ。手動でバックアップしようとすると、忙しさで必ず忘れる。そして、忘れた頃に、データは失われる。
クラウドストレージの自動同期、定期的な自動バックアップの設定——一度仕組みを作れば、あとは意識しなくても、勝手にバックアップされ続ける。人間の意志に頼らない。仕組みに任せる。自動化されていれば、「バックアップを取り忘れていた」という、最悪の事態を防げる。設定の手間は一度だけ。それで、継続的な安心が手に入る。
クラウドと手元を、使い分ける
保存先として、クラウドと手元(ローカル)は、それぞれ長所がある。
- クラウド:PCが壊れても残る。場所を選ばずアクセスできる。災害にも強い
- 手元(ローカル):ネットがなくても使える。大容量を扱いやすい。手元で管理できる
どちらか一方ではなく、両方を使い分けるのが理想だ。クラウドを主軸にしつつ、重要なものは手元にも持つ。あるいはその逆。両方に分散させることで、どちらかが失われても、もう一方が残る。なお、クラウドに顧客の機密情報を置く場合は、セキュリティ(アクセス管理、暗号化)にも気を配る。
「復元できるか」を試しておく
バックアップで、意外と見落とされるのが、これだ。いざというとき、本当に復元できるかを、一度試しておく。
バックアップを取っているつもりでも、いざ復元しようとしたら、ファイルが壊れていた、やり方が分からなかった、という事態は、実際に起こる。バックアップは、取ることがゴールではなく、復元できて初めて意味がある。一度、試しに復元してみて、ちゃんとデータが戻るかを確認する。これをやっておくと、本番のときに慌てない。「取っているはず」を、「確実に戻せる」に変える。
安定期の一人社長へ
一人社長にとって、データは事業そのものだ。それが失われれば、誰も助けてくれず、事業は立ち行かなくなる。バックアップは、几帳面な人の趣味ではなく、事業を守る必須の備えだ。
「データは失われる」前提に立ち、重要なデータを複数の場所に保存し、自動でバックアップする。クラウドと手元を使い分け、いざというとき復元できるか試しておく。これらは、一度仕組みを作れば、あとは自動で回る。安定期に、この備えを固めておけば、データ喪失という、事業を一瞬で揺るがすリスクから、自分を守れる。守りを固めることが、安心して攻めるための土台になる。