この記事の結論

フリーランスの年金(国民年金のみ)は、会社員(厚生年金あり)より薄い。その差を補う選択肢の一つが国民年金基金だ。掛金は全額所得控除で節税になり、将来の年金を上乗せできる。ただし、原則として途中で引き出せず、iDeCoとは性質が違う。独立期に、自分に合った年金の補い方を、選択肢として知っておきたい。

この記事は、Lv.2(独立期)の一人社長に向けて書いています。

フリーランスの年金は「薄い」

独立して気づきにくいが、重要な事実がある。フリーランスの年金は、会社員より薄い

会社員は、国民年金(基礎年金)に加えて、厚生年金にも加入していた。だから、将来受け取る年金は、2階建てで手厚い。一方、フリーランス(個人事業主)は、国民年金だけ。厚生年金がない分、将来受け取れる年金は、会社員より少なくなる。

この差を、独立期のうちに認識しておくことが大事だ。何もしなければ、老後の年金は薄いまま。だからこそ、フリーランスには、この「薄い年金」を自分で補う仕組みが用意されている。その一つが、国民年金基金だ。

国民年金基金とは

国民年金基金は、国民年金に上乗せして年金を増やすための、フリーランス・個人事業主向けの公的な制度だ。会社員の厚生年金にあたる「2階部分」を、自分で作るイメージに近い。

毎月掛金を払い、将来、年金として受け取る。国民年金だけでは薄い老後の備えを、上乗せして厚くする。フリーランスと会社員の年金格差を埋めるために設けられた制度、と理解すればいい。

掛金は「全額所得控除」

国民年金基金の魅力の一つが、掛金が全額所得控除になることだ。

小規模企業共済iDeCoと同じく、払った掛金の分だけ、その年の課税所得が減り、所得税・住民税が軽くなる。将来の年金を増やしながら、毎年の節税にもなる。「老後に備えつつ、今の税金も減らす」——フリーランス向けの年金上乗せ制度に共通する、大きなメリットだ。

iDeCoとの違いを理解する

ここで、独立期の一人社長が迷うのが、「国民年金基金と iDeCo、どう違うのか」だ。どちらも、年金を上乗せし、掛金が所得控除になる。だが、性質に違いがある。

国民年金基金:確定給付に近い

あらかじめ、将来受け取る年金額が決まるタイプ。「いくら払えば、将来いくら受け取れる」が見通しやすい。運用を自分でする必要がなく、堅実だが、大きく増える性質ではない。

iDeCo:自分で運用する

自分で運用商品を選び、その運用成果によって、将来の受取額が変わる。うまく運用できれば増えるが、運用リスクも自分が負う。

つまり、「見通しの立つ堅実さ」を取るなら国民年金基金、「自分で運用して増やす可能性」を取るなら iDeCo、という方向性の違いがある。両者を組み合わせることもできるが、掛金には上限の枠があるため、自分の方針で配分を考える。

流動性に注意する

国民年金基金も、注意点は他の年金制度と同じだ。原則として、途中で引き出せない。老後のための制度だから、加入したら、基本的に老後まで掛金を払い続け、受け取りも老後になる。

だから、これも「すぐ使う可能性のあるお金」を入れてはいけない。緊急資金(すぐ使える現金)や、近い将来に必要なお金を確保した上で、長期で動かさなくていいお金の範囲で検討する。収入が不安定な独立期は特に、流動性とのバランスを慎重に見る。

独立期の一人社長へ

独立して気づきにくいが、フリーランスの年金は会社員より薄い。この差を、独立期のうちに認識し、補う選択肢を知っておくことには価値がある。

国民年金基金は、その有力な選択肢の一つだ。掛金は全額所得控除で節税になり、将来の年金を堅実に上乗せできる。iDeCoとは「確定給付か、自分で運用か」という性質の違いがあり、流動性の制約も共通する。どれを、どれだけ使うかは、自分の方針と、流動性とのバランスで決める。薄い年金を放置せず、自分で備えを設計する。それが、長く一人社長を続けるための、独立期からの準備になる。